親族が集まった席で空き家の売却が話題になり、「名義は誰になっているの」「中の荷物はそのままでいいの」と質問が続く。住所は分かっていても、共有者、登記、建物の状態を答えられる人がいない。事情のある不動産を査定へ出す前によくある場面です。
相続した空き家、長期間使っていない土地、心理的な事情がある物件などは、一般的な不動産と同じように住所と面積だけで査定できるとは限りません。所有者、相続登記、共有者、建物の状態、残置物、告知が必要な事項を先に整理すると、不動産会社へ状況を正確に伝えやすくなります。
この記事では、売却や買取査定を依頼する前の確認項目をまとめます。
こういう人はこちら
- 相続登記が済んでいない → 先に司法書士や法務局へ相談し、相続登記と準備の順番を確認する
- 空き家の管理状況や傷みが分からない → 現地の状態を確認し、分かる範囲を記録する
- 所有者と売却条件が整理できている → 査定方法と比較条件を決める
まず所有者と権利関係を確認する
最初に、誰が売却を決められるのか確認します。
- 登記事項証明書に記載された所有者
- 相続登記が完了しているか
- 相続人や共有者が複数いるか
- 抵当権、差押え、借地権などがあるか
- 境界や越境について分かっていること
- 管理を任されている人と売却権限を持つ人が同じか
共有物件や相続人が複数いる場合、一人だけで売却を決められないことがあります。具体的な手続きは司法書士、弁護士、不動産会社などへ確認します。
法務省の案内では、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、まだ相続登記をしていない場合は、2027年3月31日までが申請期限です。査定の準備とは別に進め、期限や必要書類に迷う場合は法務局や司法書士へ確認してください。(確認日:2026年10月8日。出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)
手元にある書類を集める
すべてそろっていなくても、何があり、何が見つからないかを整理します。
- 登記事項証明書、登記識別情報通知または権利証
- 固定資産税の納税通知書、課税明細書
- 公図、測量図、境界確認書
- 建築確認済証、検査済証、設計図面
- 売買契約書、重要事項説明書
- 賃貸借契約書、管理委託契約書
- 修繕、解体、特殊清掃などの記録
- 相続関係を確認できる書類
原本を送付する前に、提出先が正規の窓口か、写しでよいかを確認します。
物件の状態を事実で整理する
印象や推測ではなく、確認できた事実を記録します。
- 建物の築年、構造、床面積
- 空き家になった時期
- 雨漏り、傾き、腐食、害虫、設備故障
- 残置物、家具、廃棄物の有無
- 接道、私道、再建築に関する確認状況
- 境界未確定や越境の有無
- 賃借人、使用者、占有者の有無
- 近隣との取り決めやトラブル
- 火災、事故、事件など把握している履歴
告知すべき内容を自己判断で省かず、何をどこまで説明する必要があるかを不動産会社や法律の専門家へ確認します。
人の死に関する告知は、物件の用途や取引内容、事情によって検討が必要です。「一定期間が過ぎれば何も伝えなくてよい」と決めつけず、把握している事実を整理して相談してください。
法人所有の物件で追加確認したいこと
法人が所有する遊休不動産や事業用物件では、社内手続きと会計情報も整理します。
- 固定資産台帳上の名称、取得日、取得価額、帳簿価額
- 建物と土地の内訳
- 借入金や担保設定
- 取締役会など社内承認の要否
- 賃貸中の場合の契約と預り金
- 売却後の事業や移転への影響
- 売却損益や消費税について専門家へ確認する事項
査定額と会社に残る金額は同じとは限りません。税額や会計処理は、顧問税理士へ物件資料と売却条件を提示して確認します。
仲介と買取の違いを確認する
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の購入希望者などを探す | 不動産会社などが直接買う |
| 売却期間 | 買主が見つかるまで変動する | 条件が合えば日程を決めやすい |
| 価格 | 市場での成約を目指す | 再販売費用やリスクを考慮した提示になりやすい |
| 物件状態 | 内覧や修繕が必要になる場合がある | 現状のまま相談できる場合がある |
| 向く場面 | 時間をかけて条件を比較できる | 早期売却や管理負担の軽減を優先する |
どちらが有利かは、物件の状態、期限、費用、共有者の意向によって変わります。査定時に仲介価格と買取価格のどちらなのか確認します。
査定会社へ伝える内容
- 売却を検討する理由と希望時期
- 所有者、相続人、共有者の状況
- 物件の使用状況と管理者
- 把握している不具合や履歴
- 残置物をそのままにしたいか
- 売却前に解決できていない事項
- 現地確認へ立ち会える人
査定額を高く見せるために不明点を隠すと、契約後の条件変更やトラブルにつながる可能性があります。不明な事項は不明と伝え、確認方法を相談します。
査定結果を比べるときの項目
- 査定額の根拠
- 仲介査定か買取提示か
- 測量、登記、残置物撤去、解体などの費用負担
- 契約不適合責任など契約上の条件
- 手付金、残代金、引渡しの時期
- キャンセル条件
- 提示価格が変わる条件
- 担当者と会社の免許・連絡先
高い査定額だけで決めず、最終的に差し引かれる費用と、解決が必要な事項を一覧にして比較します。
複数社へ依頼する場合は、各社へ同じ物件情報を伝え、査定の種類と連絡方法もそろえます。比較の準備は「不動産の一括査定を使う前に決めたい比較条件と連絡ルール」で整理できます。
査定依頼前のチェックリスト
- 所有者と売却権限を確認したか
- 相続人・共有者の意向を確認したか
- 登記、税金、建物関係の資料を集めたか
- 物件の不具合と履歴を事実で整理したか
- 残置物や現地立会いの条件を決めたか
- 仲介と買取のどちらの提示か確認できるか
- 税理士、司法書士、弁護士などへ確認する事項を整理したか
不動産の売却条件や必要手続きは、物件、権利関係、地域、契約内容によって異なります。実際の判断では、不動産会社と関係する専門家の最新案内をご確認ください。
確認先
確認日:2026年10月8日。上記ガイドラインは宅地建物取引業者向けです。個別物件の告知義務の結論をこの記事で示すものではありません。

